(書誌+要約+請求の範囲)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平5−85960
(43)【公開日】平成5年(1993)4月6日
(54)【発明の名称】精製ナフタリンの製造方法
(51)【国際特許分類第5版】
C07C 15/24 8619-4H
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【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願平3−249788
(22)【出願日】平成3年(1991)9月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(72)【発明者】
【氏名】山田 光昭
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】沖見 克英
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】須田 康裕
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】掛樋 悠路 (外4名)
(57)【要約】
【目的】粗ナフタリンから不純物の除去を有効に行ないつつ、水素化精製工程によるナフタリンの歩留りを高め、高収率で精製ナフタリン得る方法を提供することを目的とする。
【構成】粗ナフタリンを、(1) 低圧液相水素化精製、(2) 脱気、(3) 酸洗浄、(4) 分離、(5) 乾燥、(6) 白土処理、(7) 蒸留、(8) 圧搾の各工程により順次処理することを特徴とする精製ナフタリンの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】粗ナフタリンを、(1) 低圧乃至中圧液相水素化精製、(2) 脱気、(3) 酸洗浄、(4) 分離、(5) 脱水、(6) 白土処理、(7) 蒸留、(8) 圧搾の各工程により順次処理することを特徴とする精製ナフタリンの製造方法。
【請求項2】粗ナフタリンを、(1) 低圧乃至中圧液相水素化精製、(2) 脱気、(3) 酸洗浄、(4) 分離、(5) 脱水、(6) 白土処理、(7) 蒸留の各工程により順次処理することを特徴とする準精製ナフタリンの製造方法。
【請求項3】圧搾工程による残分を粗ナフタリンとして用いる請求項1又は請求項2記載の製造方法。
詳細な説明
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は精製ナフタリンの製造方法、より詳しくは粗ナフタリン(純度90〜98%)から不純物を除去することにより高純度の精製ナフタリンを製造する方法に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】高純度の精製ナフタリンは、界面活性剤、防虫剤、染料中間物質、高機能プラスチック、医薬品等の原料として幅広く利用されている。上記精製ナフタリンは一般にコールタールを蒸留して得られる粗ナフタリン(市販ナフタリン)から製造されるが、この粗ナフタリンは硫黄分(約 4500 ppm)、塩基性窒素分(約500ppm)、オレフィン類(約0.2%)等の多数の不純物を含んでいる。
【0003】このため、粗ナフタリンより精製ナフタリンを製造するために粗ナフタリンから上記各種の不純物を除去する方法が種々提案されている。例えば粗ナフタリンを高温高圧下で水素化精製した後、冷却固化し、圧搾し、溶融して蒸留した後に白土処理を施すことにより精製ナフタリンを得る方法がある。また、オレフィン、キノリン等を除去する方法として冷却晶析法も知られている。
【0004】しかしながら、前者の方法では水素化精製に於ける反応条件が厳しいために装置にかかる負担が大きくなり、しかも副生成物として5〜10%ものテトラリンがナフタリンから生成し、精製ナフタリンの歩留まりのロスが大きくなる。一方、後者の方法ではナフタリン純度は99%程度に向上できるものの、硫黄分が実質的に除去されないという問題がある。
【0005】
【問題点を解決するための手段】本発明は、粗ナフタリンから不純物の除去を有効に行ないつつ、水素化精製工程によるナフタリンの歩留りを高め、高収率で精製ナフタリン得る方法を提供することを目的とする。
【0006】本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定条件下の低圧乃至中圧液相水素化を行ない、次いで酸洗浄し、白土処理した場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】即ち、本発明は、粗ナフタリンを、(1) 低圧乃至中圧液相水素化精製、(2) 脱気、(3) 酸洗浄、(4) 分離、(5) 脱水、(6) 白土処理、(7) 蒸留、(8) 圧搾の各工程により順次処理することを特徴とする精製ナフタリンの製造方法に係るものである。
【0008】以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】本発明の出発原料として用いる粗ナフタリンとしては、純度90〜98%程度の通常の粗ナフタリンであれば特に限定されない。
【0010】まず上記粗ナフタリンの水素化を低圧乃至中圧液相水素化精製工程により行なう。その反応条件としては、水素ガス気流下、反応温度100〜300℃程度、反応圧力0〜20kgf/cm2 程度、より好ましくは5〜10kgf/cm2 程度、流量比(水素/ナフタリン)50〜2000(Nm3 /m3 )、空塔速度0.5〜5(1/h)とし、触媒としてはコバルト−モリブデン触媒(Co,Mo/Al2O3 )、ニッケル−モリブデン触媒(Ni,Mo/Al2 O3 )、白金−活性炭触媒(Pt/C)、ニッケル−タングステン触媒(Ni,W/Al2 O3 )、Pt・Ni合金−モリブデン触媒(Pt−Ni,Mo/Al2 O3 )、パラジウム−アルミナ触媒(Pd/Al2 O3 )等の公知の各種触媒を用いることができる。
【0011】上記水素化精製で発生した硫化水素、アンモニア、エチルベンゼン等を脱気工程により除去する。脱気方法としては、溜めに静置して分離する方法、煮沸による気液分離法等の公知の方法に従って行なえばよい。
【0012】次に残留した粗ナフタリンを酸性水溶液により酸洗浄を行ない、残留する塩基性窒素分を取り除く。ここで用いる酸性水溶液としては、硫酸、塩酸等の各種無機酸を用いることができる。その濃度は通常5〜30%とし、25〜85℃程度の温度下で処理を行ない、その後エチルベンゼンと水との共沸蒸留によってナフタレン中の水分を除去する。
【0013】酸洗浄後、白土処理を行なうが、この処理によりキノリン、イソキノリン等の残留する塩基性窒素分等の微量不純物が取り除かれる。白土処理工程ではナフタリンとベンゾチオフェンとの2量化反応によって高沸点化合物が生成されるので、次工程の蒸留においてベンゾチオフェンの分離除去を容易に行なうことができる。白土処理で使用する白土としては、通常用いられる白土のほかにシリカアルミナ等の固体酸を有するものが使用できる。白土処理の条件は常圧下100〜200℃程度で空塔速度は0.5〜5(1/h)程度とする。
【0014】続いて、常法に従い蒸留を行ない、準精製ナフタレンを得る。次にこれを圧搾することにより本発明精製ナフタレンが得られる。上記圧搾はスクリュープレス等の装置により常法に従って行なうことができる。一方、圧搾による残分(全体の30%程度)は、再び原料粗ナフタリンとして上記プロセスに供給すれば更に精製ナフタリンの歩留りの向上を図ることができる。
【0015】
【発明の効果】本発明によれば以下のような優れた効果が得られる。
【0016】(1)水素化精製におけるテトラリン副生率を2%以下に抑え、精製ナフタリンの歩留りを大幅に向上することができる。また水素の消費量も比較的少量で済ますことができる。
【0017】(2)塩基性窒素分を水素化精製に引続く酸洗浄により除去するため、固体吸着剤の使用量を低減させることができる。
【0018】(3)水添ナフタレンを水素化精製時に副生するエチルベンゼンに溶かし、酸洗浄を行なうことができ、その際粗ナフタリンを酸洗浄する場合にはスラッジの発生がない。
【0019】(4)製造工程中、固化溶融工程がなく、プラントフロー上ナフタリンを一貫して液体として取り扱えるので一連の流通系の操作が簡便に行なえる。
【0020】(5)水素化精製における反応条件が比較的穏やかであり、特に反応圧力が10kgf/cm2 以下のときには装置にかける負担ひいては装置の設置コストを軽減でき、しかも操業及び保持点検が容易となる。
【0021】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明瞭にする。但し、本発明は実施例のみに限定されない。尚、実施例中の%はすべて重量%を示す。 実施例1【0022】
【表1】
【0023】原料として表1に示すような組成をもつ粗ナフタリンを用い、図1に示すような工程に従い、まず中圧液相水素化精製を行なった。反応条件は、水素ガス気流下、反応温度280℃、反応圧力6kgf/cm2 程度、流量比(水素/ナフタリン)172(Nm3 /m3 )、空塔速度2(1/h)とし、触媒としてはコバルト−モリブデン触媒(Co,Mo/Al2 O3 )を用いた。このとき発生した硫化水素、アンモニア、エチルベンゼン等を脱気工程により除去した。
【0024】次に残留した粗ナフタリンを20%硫酸水溶液により60℃にて酸洗浄を行ない、塩基性窒素分を取り除いた。その後乾燥させた。
【0025】乾燥後、常圧下150℃で空塔速度1(1/h)で白土処理を行なった。続いて、常法に従い蒸留を行ない、準精製ナフタレンを得、次にこれをスクリュープレスで圧搾することにより純度99.9%の本発明精製ナフタレンを得た。
【0026】この一連の製造工程において、低圧液相水素化精製、酸洗浄、乾燥、白土処理、蒸留及び圧搾の各段階後でのナフタリン純度(%)、テトラリン分(%)、硫黄分(ppm) 及び塩基性窒素分(ppm) の測定結果を反応条件と共に表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】実施例2反応条件を表3のようにした以外は実施例1と同様に精製ナフタリンの製造を行ない、実施例1の同様に各成分の測定を行なった。その測定結果も表3に示す。尚、低圧乃至中圧液相水素化精製における触媒としてはコバルト−モリブデン触媒(Co,Mo/Al2 O3 )を使用し、また酸洗浄には20%塩酸水溶液を用いた。
【0029】
【表3】
【0030】以上の結果より、本発明製造方法では不純物を有効に除去しつつ、ナフタリン純度を99.9%にまで向上できることがわかる。
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