特許事務所 富士山会 代表者 佐藤 富徳の発明館
 特許事務所 富士山会は、ベンチャー企業(社内ベンチャーを含む。)を支援・助成・サポートする特許事務所です。 業務分野は、環境エネルギー分野、IT技術分野、バイオ技術分野で、出世払い料金、パートナー料金、助成料金があります。特許事務所 富士山会は、特定非営利活動法人 富士山クラブを応援しています。ここには、特許事務所 富士山会 代表者である発明者 佐藤 富徳がした発明の出願リスト紹介しています。


(書誌+要約+請求の範囲)

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平11−155244
(43)【公開日】平成11年(1999)6月8日
(54)【発明の名称】自己完結型熱電併給システムおよび自己完結型熱電併給方法
(51)【国際特許分類第6版】
H02J 15/00
F25B 27/02
H02J 3/32
7/34
【FI】
H02J 15/00 D
F25B 27/02 K
H02J 3/32
7/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願平9−321653
(22)【出願日】平成9年(1997)11月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(72)【発明者】
【氏名】藤本 宏之
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】嘉数 隆敬
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】菊田 治夫
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎



(57)【要約】
【課題】 システム全体の効率を図るとともに、設備容量を低減することができる自己完結型熱電併給システムおよび自己完結型熱電併給方法を提供することである。
【解決手段】 電力負荷10に供給される交流電力を生成する交流発電機2と、交流発電機2を駆動するガスタービン3と、ガスタービン3の排熱を回収する排熱回収手段22と、電力を蓄える蓄電池4と、交流発電機2からの交流電力を直流電力に変換するコンバータ12と、蓄電池4からの直流電力を交流電力に変換するインバータ14と、インバータ14およびコンバータ12を制御する制御手段とを含む自己完結型熱電併給システムおよびこのシステムを用いる自己完結型熱電併給方法。制御手段は、電力負荷10の消費電力が交流発電機2の特定出力より小さいとき交流発電機2からの余剰電力を蓄電池4に蓄え、電力負荷10の電力消費量が前記特定出力を超えると不足電力を蓄電池4に蓄えられた電力で補給する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】 電力負荷に電力を供給する発電機と、発電機を駆動する熱機関と、熱機関で発生する排熱を回収する排熱回収手段とを有する自己完結型熱電併給システムにおいて、電力を蓄える蓄電池と、電力負荷の消費電力が発電機の特定出力未満のとき、発電機からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が発電機の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給する制御手段とを含むことを特徴とする自己完結型熱電併給システム。
【請求項2】 前記発電機が交流発電機または直流発電機であることを特徴とする請求項1記載の自己完結型併給システム。
【請求項3】 前記熱機関が燃料ガスを利用するガスタービンであることを特徴とする請求項1または2記載の自己完結型熱電併給システム。
【請求項4】 電力負荷に電力を供給する燃料電池と、燃料電池で発生する排熱を回収する排熱回収手段とを有する自己完結型熱電併給システムにおいて、電力を蓄える蓄電池と、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力未満のとき、燃料電池からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給する制御手段とを含むことを特徴とする自己完結型熱電併給システム。
【請求項5】 前記排熱回収手段が、吸収式冷凍機と温水ボイラとを含み、吸収式冷凍機で得られた冷水と、温水ボイラで得られた温水とを用いて空調を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自己完結型熱電併給システム。
【請求項6】 電力負荷に供給される電力を発生する発電機を熱機関の軸出力によって駆動し、熱機関からの排熱を排熱回収手段によって回収する自己完結型熱電併給方法において、電力負荷の消費電力が発電機の特定出力未満のとき、発電機からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が発電機の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給することを特徴とする自己完結型熱電併給方法。
【請求項7】 電力負荷に供給される電力を発生する燃料電池を稼動し、燃料電池からの排熱を排熱回収手段によって回収する自己完結型熱電併給方法において、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力未満のとき、燃料電池からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給することを特徴とすることを特徴とする自己完結型熱電併給方法。
【請求項8】 電力負荷に供給される交流電力を発生する交流発電機と、電力を蓄える蓄電池と、交流発電機からの交流電力を直流電力に変換するコンバータと、前記蓄電池からの直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータおよび前記コンバータを制御する制御手段とを含み、前記制御手段は、電力負荷の消費電力が交流発電機の特定出力未満のとき交流発電機からの交流電力の一部を前記蓄電池に蓄えるために前記コンバータを作動させ、電力負荷の消費電力が前記特定出力を超えるとき前記蓄電池に蓄えられた電力を電力負荷に供給するために前記インバータを作動させることを特徴とする電力貯蔵装置。
【請求項9】 電力負荷に供給される電力を発生する直流発電機と、電力を蓄える蓄電池と、前記直流発電機および前記蓄電池からの直流電力を交流電力に変換するインバータと、電力負荷の消費電力が直流発電機の特定出力未満のとき、直流発電機からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が直流発電機の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給する制御手段とを含むことを特徴とする電力貯蔵装置。
【請求項10】 直流の電力負荷に供給される電力を発生する直流発電機と、電力を蓄える蓄電池と、電力負荷の消費電力が直流発電機の特定出力未満のとき、直流発電機からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が直流発電機の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給する制御手段とを含むことを特徴とする電力貯蔵装置。
【請求項11】 電力負荷に供給される電力を発生する燃料電池と、電力を蓄える蓄電池と、前記燃料電池および前記蓄電池からの直流電力を交流電力に変換するインバータと、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力未満のとき、燃料電池からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給する制御手段を含むことを特徴とする電力貯蔵装置。
【請求項12】 直流の電力負荷に供給される電力を発生する燃料電池と、電力を蓄える蓄電池と、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力未満のとき、燃料電池からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給する制御手段を含むことを特徴とする電力貯蔵装置。

詳細な説明

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、熱電併給システム(一般にはコージェネシステムともいう)において、他から電力の供給を受けない自己完結型熱電併給システムおよび自己完結型熱電併給方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱電併給システムは、発電に際して発生する排熱を有効に利用するシステムとして最近注目されている。熱電併給システムにおいては、発電機を駆動する熱機関から排出される排ガスの保有する熱エネルギが排熱として回収されて有効に利用されるので、エネルギの利用効率が高い。
【0003】従来用いられている熱電併給システムは、電力負荷の消費電力に応じて発電機を稼動しているため、最大の消費電力に対応した大容量発電機を設けている。そして消費電力が少ないときには、発電機は少ない負荷で運転される。発電機を駆動する熱機関、たとえば燃料ガスを利用するガスタービンは、特定出力で運転されるとき最も効率がよく、低負荷運転では効率が低下する。さらに極端な低負荷では運転はできない。そのため電力負荷の消費電力が一定量を超えたときは買電を併用し、また電力負荷の消費電力が極端に低い深夜などは、発電機を停止し買電に切替えている。
【0004】また、近年、独立形態の電力供給システムの導入が検討されている。これは、電気事業法の規制緩和に伴い、一般電気事業者以外のものの電気事業への参入が認められたことによる。このような電気事業への参入形態として、たとえば、電気を供給する地域を限定した特定地点供給が挙げられる。このような場合には、電気を供給する供給業者は、事故または定期点検などのバックアップのとき以外は一般電気事業者からの電気供給を受けることはできない。それゆえに、その特定地域の電気供給業者は、電気需要に応じて全て供給する義務があり、したがってこのようなシステムを提供しようとする業者は、故障等の特別な場合を除いて商用電源からの電力を受けなくて運転される形態の電源供給システム、すなわち自己完結型のシステムを採用する必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような自己完結型システムの場合、平常時に商用電力を使用しないため、システム全体の供給能力(発電能力)を最大消費電力に合わせなければならない。しかしながら、消費電力は、たとえば、春夏秋冬の季節によって変動(季節変動)し、また一日のうち昼と夜によって変動(昼夜変動)する。それゆえに、自己完結型システムの発電能力をこれらの変動の最大消費電力に合わせた場合、発電設備が非常に大型化し、その設備のための投資も多額となる問題がある。また発電設備は、大部分の時間効率の悪い低負荷で運転しなければならないという問題がある。
【0006】本発明の課題は、システム全体の効率の向上を図るとともに、設備容量を低減して、コンパクトにすることができる自己完結型熱電併給システムおよび自己完結型熱電併給方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、電力負荷に電力を供給する発電機と、発電機を駆動する熱機関と、熱機関で発生する排熱を回収する排熱回収手段とを有する自己完結型熱電併給システムにおいて、電力を蓄える蓄電池と、電力負荷の消費電力が発電機の特定出力未満のとき、発電機からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が発電機の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給する制御手段とを含むことを特徴とする自己完結型熱電併給システムである。
【0008】また本発明は、電力負荷に供給される電力を発生する発電機を熱機関の軸出力によって駆動し、熱機関からの排熱を排熱回収手段によって回収する自己完結型熱電併給方法において、電力負荷の消費電力が発電機の特定出力未満のとき、発電機からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が発電機の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給することを特徴とする自己完結型熱電併給方法である。
【0009】ここで用いる特定出力とは、一般に最大出力未満であって最も効率のよい定格出力を云うが、これに限るものではない。また特定出力は時間とともに変化しない一定値に設定する場合が多いが、これに限らず特定出力が時間とともに変化するように設定することもできる。
【0010】本発明に従う自己完結型熱電併給システムには蓄電池が設けられる。このため発電機は、常に特定出力で運転され、余剰電力が生じたときは、蓄電池に蓄えられ、電力が不足したときは蓄電池に蓄えられた電力が補給される。このため最大消費電力を賄う大容量の発電機およびこれを駆動する大容量の熱機関を必要とせず、設備容量を低減でき、全体の熱電併給システムをコンパクト化できる。また常に特定出力で発電機が運転されるので、熱機関および発電機の効率を高くすることができ、排熱回収手段を含めて高効率でエネルギが変換される。また本システムを用いれば電力負荷が極端に少ない深夜などは、発電機を停止して、蓄電池のみの電力供給も可能である。
【0011】また本発明は、前記発電機が交流発電機または直流発電機であることを特徴とする。
【0012】本発明に従えば、電力負荷に用いられる照明機器、AV機器、厨房機器、空調機器などに市販の交流機器を用いる場合、交流発電機で発電されるので発電された交流電力がそのまま電力負荷に供給される。なお交流発電機で発電された交流電力はコンバータによって直流電力にされ、蓄電池に蓄えられ、蓄電池に蓄えられた直流電力はインバータによって電力負荷に変換されて電力負荷に供給される。また直流発電機が用いられるときは、コンバータなしで蓄電池に蓄えられ、蓄電池に蓄えられた電力は、発電機からの電力と併せてインバータによって交流に変換され電力負荷に供給される。さらに直流の電力負荷に対しては、インバータも不要になる。
【0013】また本発明は、前記熱機関が燃料ガスを利用するガスタービンであることを特徴とする。
【0014】本発明に従う熱機関は、ガスタービンである。ガスタービンは、燃料ガスとして安定供給される都市ガスが用いられ、またガスタービンは構成が簡単で使い易い。
【0015】また本発明は、電力負荷に電力を供給する燃料電池と、燃料電池で発生する排熱を回収する排熱回収手段とを有する自己完結型熱電併給システムにおいて、電力を蓄える蓄電池と、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力未満のとき、燃料電池からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給する制御手段とを含むことを特徴とする自己完結型熱電併給システムである。
【0016】また本発明は、電力負荷に供給される電力を発生する燃料電池を稼動し、燃料電池からの排熱を排熱回収手段によって回収する自己完結型熱電併給方法において、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力未満のとき、燃料電池からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が燃料電池の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給することを特徴とすることを特徴とする自己完結型熱電併給方法である。
【0017】本発明に従えば、電力負荷に供給される電力は燃料電池によって発電される。燃料電池も特定出力で運転される。余剰電力は蓄電池に蓄えられ、不足電力は蓄電池から供給される。燃料電池による発電は、ガスタービンなどの熱機関で発電機を駆動する発電に比し、可動部分が少なく騒音の発生が少ない。またエネルギの変換効率も高い。なお燃料電池で発生する電力は直流電力であるので、直流発電機の場合と同様コンバータは不要である。
【0018】また本発明は、前記排熱回収手段が、吸収式冷凍機と温水ボイラとを含み、吸収式冷凍機で得られた冷水と、温水ボイラで得られた温水とを用いて空調を行うことを特徴とする。
【0019】本発明に従えば、排熱回収が冷房を必要とする期間は吸収式冷凍機で行われ、ここで得られた冷水は冷房に用いられる。また暖房を必要とする期間は排熱回収が温水ボイラで行われ、ここで得られた温水は暖房に用いられる。これによって空調機器などに使う電力負荷は、冷温水の送水用ポンプ、換気ファンなど僅かなものになる。なお吸収式冷凍機や温水ボイラの排ガスはさらに給湯機などで熱回収することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施の形態である自己完結型の熱電併給システム1のブロック図である。本システム1は、電力負荷10にライン82を介して電力を供給する交流発電機2と、交流発電機2を駆動するガスタービン3と、蓄電池4と排熱回収手段22とを含む。交流発電機2で発電された電力は、商用電力と実質上同一の電圧、周波数でよく、たとえば100V,60Hzである。燃料ガスは、燃料ガス供給源5から管路84を介して供給され、流量制御装置6でその流量が制御され、燃焼器7で燃焼される。高温の燃焼ガスはタービン8を駆動する。タービン8には、交流発電機2と圧縮機9とが直結され、圧縮機9では空気が加圧され、燃焼器7に送られ燃焼用空気となる。交流発電機2は、回転数を一定にすることによって一定の周波数の交流を発電する。このためガスタービン3は、回転数を一定にし、出力トルクに応じて燃料ガスの流量が流量制御装置6で制御される。タービン8の排ガスは、管路86を介して排熱回収手段22で排熱が回収される。
【0021】蓄電池4は、たとえば鉛蓄電池、リチウムイオン蓄電池等でよく、この蓄電池4と電力負荷10との間にコンバータ12およびインバータ14が配設されている。コンバータ12は、交流電力を直流電力に変換するものであり、電力負荷10に供給される交流電力の一部を蓄電池4に蓄えるときに作動される。また、インバータ14は、直流電力を交流電力に変換するものであり、蓄電池4に蓄えた電力を電力負荷10に供給するときに作動される。
【0022】発電機2と電力負荷10との間には、同期投入装置16によって投入される第1の開閉スイッチ18が設けられる。またインバータ14と電力負荷10との間には、同期投入装置16によって投入される第2の開閉スイッチ20が配設されている。同期投入装置16は、交流発電機2から電力負荷10に電力を供給しているときにさらにインバータ14からの交流電力を負荷10に供給するとき、あるいはインバータ14から電力負荷10に電力を供給しているときにさらに交流発電機2からの交流電力を負荷10に供給するときに作動される。この同期投入装置16は、交流発電機2からの交流電力とインバータ14からの交流電力の電圧、周波数および位相を検出してそれらがほぼ一致したときに第1の開閉スイッチ18(インバータ14からの電力に加えて交流発電機2からの電力を供給するとき)または第2の開閉スイッチ20(交流発電機2からの電力に加えてインバータ14からの電力を供給するとき)を閉(ON)にする。
【0023】本システム1は、制御手段42によって作動制御される。図2に示すように電力負荷10の消費電力Lが電力計44によって検出され、制御手段42に送給される。制御手段42は、この電力計44からの信号に応じて、交流発電機2、流量制御装置6、コンバータ12、インバータ14および同期投入装置16を作動制御する。すなわち、制御手段42は、交流発電機2に関連して、これを作動させるときには作動信号を生成し、また流量制御装置6に関連し、交流発電機2の出力を大きくするときには増加信号を、交流発電機2の出力を小さくするときには減少信号をそれぞれ生成する。さらに、この制御手段42は、コンバータ12に関連して、発電機2からの交流電力を蓄電池4に蓄えるときには貯蔵信号を生成し、蓄電池4とコンバータ12との間にある接点25が可動片23によって蓄電池4に接続される。またインバータ14に関連して、蓄電池4に蓄えられた電力を電力負荷10に送給するときには送給信号を生成し、蓄電池4とインバータとの間にある接点21が可動片23によって蓄電池4に接続される。さらにまた、発電機2からの電力に加えて蓄電池4からの電力を電力負荷10に供給するとき、または蓄電池4からの電力に加えて発電機2からの電力を負荷10に供給するときには、制御手段42は投入信号を生成し、同期投入装置16に送給する。
【0024】かくのとおり本システム1は、自己完結型システムとして用いられるが、システムの点検、故障等の通常運転が不可能な場合には、図示していないが、一般の商用電源に電気的に接続され、商用電源からの電力が電力負荷10に供給されることも考えられる。
【0025】次に、図3に示すフローチャートに従って制御手段42による制御について説明する。本実施の形態では、交流発電機2は通常は特定出力で運転され、電力負荷10の消費電力が交流発電機2の特定出力より小さいとき、交流発電機2からの余剰電力が蓄電池4に蓄えられ、電力負荷10の消費電力が特定出力を超えると蓄電池4からの電力が負荷10に供給される。したがって、通常、第1の開閉スイッチ18は閉状態に維持される。
【0026】詳述すると、ステップa2で電力負荷10の電力消費Lが交流発電機2の特定出力Wと等しい場合には、交流発電機2にて発生する電力と電力負荷10の電力消費とが等しいので、発電機2からの電力は全て電力負荷10に供給され、電力負荷10にて消費される。それゆえに、制御手段42は貯蔵信号および送給信号を生成することなく、ステップa3で第1の開閉スイッチ18が閉状態となり、第2、第3の開閉スイッチ20,24が開状態となり、コンバータ12およびインバータ14は非作動状態にある。
【0027】ステップa2でL≠Wの場合、ステップa5でL<WかL>Wかが判断され、L<Wのときステップa6でL≦W0かL>W0かが判断される。L<Wは夜間の電力小使用期間であり、L≦W0は深夜の電力極小使用期間に相当する。W>L>W0のとき、ステップa7に進み、第3の開閉スイッチ24を閉じ、ステップa8に進み、制御手段42は貯蔵信号を生成してコンバータ12に送給する。かくすると、コンバータ12が作動し、発電機2からの電力のうち余剰の交流電力が直流電力に変換され、変換された電力が蓄電池4に充電される。ステップa9で蓄電池4が充電完了か否かが蓄電池の温度などで判断され、充電が完了すると、蓄電池4から充満電信号が制御手段42に送給され、この充満電信号に基づいて制御手段42は貯蔵信号の生成を終了し、これによって蓄電池4への充電が停止する。蓄電池4への充電が完了した後は、ステップa10に進み、第2の開閉スイッチ24が開き、ステップa11に進み、電力負荷10の増減に応じて(この増減は発電機2の特定出力より小さい範囲内における増減である)制御手段42は増加信号、減少信号を生成する。増加信号(または減少信号)が生成されると、流量制御装置6によるガスの送給量が増加(または減少)し、交流発電機2の発電量が増大(または減少)し、交流発電機2は負荷10の電力消費量に対応した電力発生する。
【0028】ステップa5でL>Wと判断される。すなわち電力負荷10の消費電力が交流発電機2の特定出力より大きくなる(たとえば昼間の電力大使用期間になる)と、ステップa12に進み、制御手段42は、送給信号を生成してインバータ14に送給する。かくすると、インバータ14が作動され、蓄電池4からの直流電力が交流電力に変換され、ステップa13に進み、制御手段42は、投入信号を生成し、この投入信号を同期投入装置16に送給する。かくすると、同期投入装置16が作動し、交流発電機2からの交流電力とインバータ14からの交流電力の電圧、周波数および位相を検出してこれらが一致すると第2の開閉スイッチ20を閉にする(この第2の開閉スイッチ20は、インバータ14からの電力の供給が停止すると開(OFF)になる)。第2の開閉スイッチ20が閉になると、交流発電機2からの電気回路とインバータ14からの電気回路とが電気的に接続され、交流発電機2からの交流電力に加えてインバータ14からの交流電力が電力負荷10に送給され、発電機2の不足電力が蓄電池4からの電力によって補充される。かくして、発電機2と蓄電池4を組合わせて発電機2の能力不足分を蓄電池4によって補充するようにしているので、発電機2自体の能力、すなわち発電機およびそれに関連する設備を小さくすることができ、システム全体のコストダウンを図ることができる。
【0029】システムをより効率的に運用するには、次のとおりにするのが好ましい。すなわち、ステップa6でL≦W0と判断されたとき(たとえば深夜の電力極小使用期間になる)には、交流発電機2を停止して蓄電池4から電力を供給する。ステップa15では、交流発電機2からの交流電力が第1および第3の開閉スイッチ18,24が閉じて、電力負荷10とコンバータ12を介して蓄電池4に供給されていることが確認される。ステップa16では制御手段42は、貯蔵信号の生成を停止し、送給信号を生成してインバータ14に送給する。これによってインバータ14が作動され、蓄電池4からの直流電力が交流電力に変換される。ステップa17に進み、制御手段42は投入信号を生成し、この投入信号を同期投入装置16に送給する。かくすると同期投入装置16が作動し、これによって同期投入装置16は、交流発電機2からの交流電力とインバータ14からの交流電力の電圧、周波数および位相がほぼ一致したとき、第2開閉スイッチが閉じ、ステップa18で第1および第3開閉スイッチ18,24が開く。これで瞬間停電を生じることなく、電力負荷10に供給される電力が交流発電機2の電力から蓄電池4からインバータ14を介した電力に切換わる。次にステップa19で制御手段42は、作動信号の生成を停止する。作動信号が生成されなくなると、交流発電機2の作動が停止し、燃料ガスの供給が流量制御装置6で停止される。この状態はステップa20でL≦W0の間継続される。
【0030】前記の状態から電力負荷10の消費電力が増大して、ステップa20でL≦W0が否定されると、ステップa21に進み、制御手段42は作動信号を生成し、これによって流量制御装置6はガス供給源8から燃料ガスを交流発電機2の駆動のために燃焼器7に供給し、交流発電機2が作動して交流電力を生成する。次にステップa22に進み投入信号が生成される。これによって同期投入装置16は、交流発電機2からの交流電力とインバータ14からの交流電力の電圧、周波数および位相がほぼ一致したとき第1の開閉スイッチ18を閉にし、交流発電機2にて発生した交流電力が負荷10に送給される。次にステップa23に進み送給信号を停止する。これによってインバータ14が非作動状態となり、これに伴って第2の開閉スイッチ20が開(OFF)になり、蓄電池4からの電力の供給が終了する。次にステップa24に進み制御手段22で貯蔵信号が生成され、コンバータ12が作動され、発電機2からの交流電力の一部が蓄電池4に蓄えられる。したがって電力負荷10の消費電力が極小から小に増大すると、蓄電池4に代えて交流発電機2により電力が供給される。
【0031】図4は交流発電機2の特定出力と電力負荷10の消費電力とが等しいステップa3の電流の状態を示す図であり、図5は交流発電機2の特定出力が電力負荷10の消費電力を超えるステップa10(たとえば夜間)の電流の状態を示す図であり、図6は交流発電機の特定出力が電力負荷未満であるステップa14(たとえば昼間)の電流の状態を示す図であり、図7は電力負荷10の消費電力が極端に小さいステップa21(たとえば深夜)の電流の状態を示す図である。
【0032】本実施の形態における交流発電機2の特定出力は、最も効率のよい運転が可能となる出力である。これは交流発電機2の最大出力の70〜80%のことが多い。したがって電力負荷10の消費電力と交流発電機2の特定出力とが等しい場合として、特定出力と最大出力との間の消費電力としてもよい。この場合は、電力負荷の増減に応じて(この増減は発電機2の特定出力と最大出力との間における増減である)制御手段42は増加信号または減少信号を生成し、流量制御装置6による燃料ガスの送給量が増加または減少し、交流発電機2は負荷10の電力消費量に対応した電力を発生する。
【0033】排熱回収手段22は、ガスタービン3の排ガスを管路86を介して受入れ、その排熱を回収するものであり、吸収式冷凍機19、温水ボイラ26、給湯器28などから成る。タービン8の排ガスは、冷房を必要とするときは、バルブV1から吸収式冷凍機19の再生器に供給され、冷水を発生する。暖房を必要とするときは、バルブV2から温水ボイラ26に供給され温水を発生する。これらで発生した冷温水は、バルブV3〜V6を切換えることによって管路88を介して空調装置30に送られ、空調装置30からの冷温水は管路90を介して吸収式冷凍機19または温水ボイラ26に戻される。冷温水が排熱回収手段22から供給されるので、空調装置30の電力負荷は、吸収式冷凍機19の運転に必要なものおよび冷温水の送水ポンプ、換気ファンなど僅かである。吸収式冷凍機19または温水ボイラ26から排ガスは給湯器28に導かれ、さらに排熱を回収されて大気中へ放出される。冷暖房を必要としないときは、タービン8からの排ガスは直接バルブV7から給湯器28に導かれる。給湯器28で得られた温水は、風呂などの給湯負荷32に供給される。
【0034】図8は、本発明の第2の実施の形態の自己完結型熱電併給システム51のブロック図である。本実施の形態では先の実施の形態の交流発電機2の代わりに直流発電機52が設けられている。直流発電機52では、直流電力が得られるので蓄電池4に蓄えるときにコンバータ12は不要である。また直流発電機52からの電力は、単独でまたは蓄電池4からの電力と併せてインバータ14で交流電力に変換されて電力負荷に供給されるので同期投入装置16も不要である。先の実施例の第1〜第3開閉スイッチ18,20,24は、開閉スイッチ18a,20a,24aの位置に配置され、緊急遮断用スイッチ54が設けられる。その他の構成は先の実施の形態と類似しており、同一の機器には同一の符号を付す。
【0035】図9は、本発明の第3の実施の形態の自己完結型熱電併給システム61のブロック図である。本実施の形態では先の実施の形態の直流発電機52およびガスタービン3の代わりに燃料電池62が用いられている。燃料ガスは改質装置63で触媒によって水素に改質され、燃料電池62ではこの水素と空気中の酸素とが反応して水ができ、この際に直流電力が発生する。この直流電力は、先の実施の形態と同様に直接蓄電池4に蓄えられ、また単独でまたは蓄電池4からの直流電力と併せてインバータ14で交流に変換されて電力負荷に供給される。その他の構成は先の実施の形態と類似しており、同一の機器には同一の符号を付す。
【0036】図10は、本発明の第4の実施の形態の自己完結型電熱併給システム71のブロック図である。本実施の形態では電力負荷11に直流の電気機器が用いられる。したがって直流発電機52および蓄電池4と電力負荷11との間にはインバータ14は不要である。その他の構成は先の実施の形態と類似しており、同一の機器には同一の符号を付す。
【0037】図11は、本発明の第5の実施の形態の自己完結型熱電併給システム81のブロック図である。本実施の形態では直流発電機52およびガスタービン3の代りに改質装置63を含む燃料電池62が用いられる。その他の構成は先の実施の形態と類似しており、同一の機器には同一の符号を付す。
【0038】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、本発明の課題を充分に達成することができた。すなわち、発電機または燃料電池は特定出力で運転され、電力の使用が少なく、電力に余剰があるときには、余剰電力が蓄電池に蓄えられ、電力の使用量が多く不足しているときには、不足電力が蓄電池から負荷に供給されるため、最大消費電力を賄う大型の発電機または燃料電池を必要とせず、設備容量を低減し、全体の熱電併給システムをコンパクト化するとともに発電機または燃料電池を最も効率のよい状態で運転できる。また発電機を駆動する熱機関または燃料電池の排熱も有効に利用できる。




 特許事務所 富士山会は、ベンチャー企業(社内ベンチャーを含む。)を支援・助成・サポートする特許事務所です。 業務分野は、環境エネルギー分野、IT技術分野、バイオ技術分野で、出世払い料金、パートナー料金、助成料金があります。特許事務所 富士山会は、特定非営利活動法人 富士山クラブを応援しています。ここには、特許事務所 富士山会 代表者である発明者 佐藤 富徳がした発明の出願リスト紹介しています。
 特許事務所 富士山会

Copyright (C) 2003 FUJISANKAI. All Rights Reserved. ただし、自由にお使い下さい。